無精子症について

無精子症(Azoospermia)

無精子症azoospermiaは精液中に精子が見られないもので、全男性の1%、男性不妊症の患者さんの10~15%にみられるとされていますが、精液がまったく出ない無精液症aspermiaとは違うものです。精液を遠心分離して(正確な表現ではありませんが)精液を濃縮しても精子が見つからなければ無精子症と診断されますが、少なくとも2回は精液検査を行い確認する必要があります。
無精子症の原因は大きく3つに分けられます。
・『精巣前性無精子症(二次性精巣機能障害)』は、内分泌(ホルモン)の異常が精巣の精子を作る働きを障害しているものです。
・『精巣性無精子症(原発性精巣機能障害)』は、精巣での精子を作る働き自体に問題があるものです。
・『精巣後性無精子症』は、精巣で精子は作られているのですが、精子の通り道(精路)の閉塞や射精障害により精液中に精子が出てこないものです。

1. 精巣前性無精子症(二次性精巣機能障害)

両側の精巣が小さく、内分泌検査でFSHとテストステロンがともに低いと、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症と考えられます。
原因としては先天性のKallman症候群下垂体の腫瘍下垂体手術の後遺症などがありますが、わが国でもHCG(胎盤性性腺刺激ホルモン)とFSHの自己注射ができるようになったので、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症では内分泌療法でお子さんを授かることにかなり期待がもてるようになりました(無精子症であっても内分泌療法後に射出精子を期待できます)。

2. 精巣性無精子症(原発性精巣機能障害)

両側の精巣が小さく、FSHが上昇しており、テストステロンは正常か低いということであれば、原発性精巣機能障害で精子が作られていない状況が考えられます。
大人になってから「おたふく風邪」にかかり、精巣が腫れると子供ができなくなる(両側ムンプス精巣炎後の後遺症)というのは精巣性無精子症です。また、精巣性無精子症の患者さんには生まれつきに染色体に異常があることがあり、よくみられる染色体異常は普通の男性(46,XY)よりX染色体が多いクラインフェルター症候群(47,XXY のことが多い)です。
精巣性無精子症でも、精索静脈瘤があれば、顕微鏡下に内精索静脈を結紮して、その30%で精液中に精子が出現したとの報告があります(Fertil Steril, 635-639, 2006)。精索静脈瘤が原因でなければ、治療による精液中への精子の出現は期待できませんので、昔は原発性精巣機能障害による無精子症と分かった時点でお子さんについては諦めてくださいと説明されていました。しかし生殖医療技術の進歩により、現在では顕微鏡で精巣内のごくわずかな精子を探し出し(顕微鏡下精巣内精子回収術microdissection TESE)、その精子で顕微授精(ICSI)を行い、お子さんを授かることができるようになりました。
精巣の大きさが正常で、FSHも高くないのに精巣性無精子症(原発性精巣機能障害)のこともあります。この場合は超音波検査での精路の評価やAZF検査などが参考になりますが、精巣での精子を作る機能が落ちているのかどうか、実際に精巣内を見てみることが最終的な診断となります。

3. 精巣後性無精子症

精巣で精子は作られているのですが、精子の通り道(精路)が詰まっていて精子が出てこれないものは閉塞性無精子症と診断されます。閉塞性無精子症の原因としては先天性の精管欠損そ径ヘルニア手術の後遺症パイプカットなどがあります。
閉塞性無精子症では、精巣内には沢山の元気な精子がいると考えられますのでお子さんを授かる希望が叶えられる可能性は大です。治療については、精路をつなぎなおす手術がいいのか、あるいは精巣内の精子を採ってきて顕微授精(ICSI)をした方がいいのかは、閉塞の原因や奥様の状況により総合的に判断しなければなりません。

無精子症の治療

精巣前性無精子症(二次性精巣機能障害・低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)に対してはまずは内分泌療法で治療を行います。保険診療で治療可能ですが指定難病(当院(難病指定医療機関)で診断・申請できます)として認定されれば、公的医療費助成が受けられます。

精巣性無精子症、精巣後性無精子症に対しては精巣内精子回収術が治療の選択肢となります。当院では2022年4月1日より精巣内精子回収術も保険診療で治療を行っております。

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