当院で行っている非閉塞性無精子症における精子回収の予測因子について

非閉塞性無精子症と診断された患者さんにとって非常に有用な情報です!

2016年にフィンランドのヘルシンキで開催された第32回欧州生殖医学会(ESHRE)で当院から2題演題を発表しましたが、そのうちの1題が、

• Clinical value of ultrasonographic (US) analysis of seminiferous tubules for predicting successful sperm retrieval in patients with non-obstructive azoospermia (NOA).(非閉塞性無精子症患者のおける、精子回収の予測因子としての精細管の超音波所見の有用性)

です。

*ESHREは、米国生殖医学会(ASRM)と並ぶ、世界で最も大きい生殖医療に関する学会です。学会では、男性不妊症の治療がいかに大切かということが認識されてきているためだと思われますが、男性不妊領域に関する演題も多くなっています。

発表した演題の内容の結論のみを言うと、
• 超音波検査における精巣内の太い精細管の確認と精巣内の不均一な所見が、非閉塞性無精子症の患者さんでの精子回収の予測因子となる

演題の内容の詳細を述べると、
• 造精機能障害を合併した非閉塞性無精子症の患者さんの精細管は萎縮している方が多いのですが、顕微鏡下に萎縮した精細管の中に一部太く白濁した精細管を確認できると、その精細管から精子を回収できる可能性が高くなります(Hum Reprod 1999;14:131-135)。この事実を術前の超音波検査で応用するため、非閉塞性無精子症の患者さんの精巣内が均一か不均一化を超音波検査で確認し、精巣内の精細管を100μm単位で詳細に評価し、精子を回収する手術(顕微鏡下精巣内精子回収術)の前に精子の回収を予測できないかを検討してみました。結果は、精巣内が不均一で300μm以上の精細管が観察された患者さんの精子回収率は、200μm以下の精細管しか観察されなかった患者さんよりも精子回収率が高いという興味深い結果となりました。この結果より、術前の超音波検査による精巣内の精細管の評価が、精子回収の予測因子となりそうだという内容です。

この発表の内容になぜ意味があるかと言いますと、非閉塞性無精子症の患者さんから、精子を回収できるかどうかを予測することは難しいのですが、精巣の超音波検査を用いればそれができそうだということを示しているからです。精路および精巣内の超音波検査は、当院が力を入れている分野で、①に関しては2007年、2009年の生殖医学会総会でもpreliminary study(予備研究)を発表しており、621例と症例数を増やしての分析です。

ここで、『非閉塞性無精子症』と『閉塞性無精子症』の違いの説明を追加させていただきますと、閉塞性無精子症の患者さんでは、精子の通り道(精路)が詰まっているために精液中に精子が出てくることができない状態ですので、精巣内では当然精子がたくさん作られており、精巣内精子回収術(精巣から精子を回収してくる手術)で、ほぼ100%精子が回収できます。しかし、非閉塞性無精子症の患者さんでは、そうはいきません。非閉塞性無精子症の患者さんでは、精巣内から精子を回収できる確率が高い手術方法(当院で行っている顕微鏡下精巣内精子回収術)でも精子を回収できないこともあります。

『非閉塞性無精子症』の精子回収予測は現在も非常に難しいとされております。しかし、当院から発表した内容は、これまでの予測因子よりかなり期待できるものです。2017年のASRM(米国生殖医学会)では症例と検討をさらに追加し、世界中の722個のPosterの中から『2nd Prize』に選ばれました.非閉塞性無精子症と診断された患者さんにとって非常に有用な情報となりますので、活用を進めていきたいと思っております。

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