超音波検査における精巣内の高度微小石灰化の所見は、非閉塞性無精子症の患者さんにおける精子回収を期待させる所見です!
フィンランドのヘルシンキで開催された第32回欧州生殖医学会(ESHRE)で当院から演題を2題発表しました。そのうちの1題が、
• Severe testicular microlithiasis in ultrasonographic (US) images indicates a micro-obstruction in seminiferous tubules and may predict a high sperm retrieval rate in non-obstructive azoospermia (NOA) patients.(超音波検査でみられる高度の精巣内微小結石症は、精細管の微小閉塞を示唆するもので、非閉塞性無精子症患者において精子回収を期待させる所見である)
です。
発表した演題の内容の結論のみを言うと、
• 超音波検査における精巣内の高度微小石灰化の所見は、非閉塞性無精子症の患者さんにおける精子回収の予測因子となる
演題の内容の詳細を述べると、
• 精巣内に微小石灰化を認めることは、成人では2.0~5.6%程度と比較的まれな病態ではあるのですが、驚くべきことに、当院に非閉塞性無精子症で受診され、精巣内にこの微小石灰化を強く認めた患者さん6名は、全例が顕微鏡下精巣内精子回収術で精子を回収できました。また病理所見からは、微小石灰化による精細管の微小閉塞が疑われました。症例数は多くはないので、微小石灰化を強く認めると非閉塞性無精子症でも100%精子が回収できるとまだ断言することはできませんが、非閉塞性無精子症と診断された患者さんであっても、精巣内に微小石灰化を強く認めた場合には、精子回収を期待してよさそうだということが言えそうです。
この発表の内容になぜ意味があるかと言いますと、非閉塞性無精子症の患者さんから、精子を回収できるかどうかを予測することは難しいのですが、精巣の超音波検査を用いればそれができそうだということを示しているからです。
ここで、『非閉塞性無精子症』と『閉塞性無精子症』の違いを再度ご説明させていただきますと、閉塞性無精子症の患者さんでは、精子の通り道(精路)が詰まっているために精液中に精子が出てくることができない状態ですので、精巣内では当然精子がたくさん作られており、精巣内精子回収術(精巣から精子を回収してくる手術)で、ほぼ100%精子が回収できます。しかし、非閉塞性無精子症の患者さんでは、そうはいきません。非閉塞性無精子症の患者さんでは、精巣内から精子を回収できる確率が高い手術方法(当院で行っている顕微鏡下精巣内精子回収術)でも精子を回収できないこともあります。
『非閉塞性無精子症』の精子回収予測は非常に難しいですが、超音波検査における精巣内の高度微小石灰化の所見は、非閉塞性無精子症の患者さんにとっては精子回収を期待できる所見として捉えております。
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当院で行っている非閉塞性無精子症における精子回収の予測因子について | MRしょうクリニック (mensrepro.com)