精索静脈瘤とその治療について

精索静脈瘤は精巣(睾丸)から心臓に戻る静脈内の血液がお腹から精巣に逆流して、精索(精子の通り道である精管、動脈、静脈、リンパ管、神経などが束になったもの)内の静脈が瘤(こぶ)状にふくれるもので、正常男性の15%にみられるとされています。思春期前の少年にみられることはまれですが、痛みを訴えて見つかることもあります。第1子が授かれない原発不妊男性の場合には35%と頻度が高く、第2子が授かれない続発不妊の男性では75-80%と高頻度にみられます。このことから精索静脈瘤を手術せずにほっておくと精液所見の悪化が進行することがあると考えられています。

精巣の静脈には左右で解剖学的な違いがあるため(右側は下大静脈という身体の中心の太い静脈に入っていきますが、左側は左腎静脈に入っていきます)、右側より左側の方が血液が流れにくく逆流しやすい影響で左側にみられることが多いのですが、左右両方にあることもあります。精索静脈瘤があると、お腹から逆流した温かい血液が精巣(睾丸)の温度を上昇させ、精子を作る働きに悪影響をおよぼすと考えられていますが、そのメカニズムについてはまだ完全には解明されていません。

不妊症の男性に精索静脈瘤があれば、これを治療することにより精液所見の改善と妊孕性の向上が期待されます。さらに無精子症の患者さんでも、精索静脈瘤を手術すると20~30%で精液中に精子がみられるようになったとする報告があります。もちろん、先天的な染色体異常などで精子を作ることができない方には、精索静脈瘤の手術をしても精液中に精子が認められるようになることは難しいと考えられます。ただ、精子形成が途中で阻害されているような方では、精索静脈瘤手術で精子を作る機能を改善させることができる可能性があります。当院でも無精子症の患者さんで精索静脈瘤手術後に精液中に精子が認められるようになった患者さんを経験しております。

診断は視診、触診と超音波検査で行います。程度の強い精索静脈瘤では、陰のう上部にミミズ状に腫れた静脈を触れます。超音波検査では拡張した内精索静脈が観察され、カラードプラ法では血液の逆流がモザイクのように色がついて描出されます。

精索静脈瘤の治療には(1)手術と、(2)経皮的静脈塞栓術(静脈内に細いチューブを入れ、そこから詰め物をして血液の逆流を止める方法)があります。さらに手術についても(1-a)精索静脈瘤高位結紮術(静脈をお腹の中の太いところでしばる。簡単だが、静脈をしばり残したり、動脈も一緒にしばってしまうことがある。)、(1-b)精索静脈瘤低位結紮術(静脈を精巣のすぐ近くでしばる。たくさんの細い静脈を顕微鏡を使ってしばらなければならないため、煩雑で、高い技術が要求されるが、静脈のしばり残しは少なく、動脈を確実に温存できる。)、(1-c)腹腔鏡による精索静脈瘤高位結紮術(カメラをおなかの中に入れて、(a)と同じところで静脈にクリップをかける。不確実なことがある。全身麻酔が必要。)があります。

当院では、精巣動脈を確実に温存でき、静脈を残さず結紮可能で、最も治療成績の良い、『手術用顕微鏡下の(1-b)精索静脈瘤低位結紮術』で精索静脈瘤の手術を保険診療にて行っております。治療成績がやや不良なため経皮的静脈塞栓術は行っていません。当院で施行している『顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術』は静脈を残さず結紮・切断し,動脈,リンパ管をできる限り残す術式で,他の手術法と比較して陰嚢水腫、精巣萎縮(当院では経験はありません)を起こす心配が非常に低く、局所麻酔下で行うことができるため全身麻酔を行う場合と比較して麻酔に伴うリスクも少ないです。当院では外精静脈、精管領域の静脈についても処理することが治療成績を向上させるために重要と考え、手間はかかりますが手術時間にこだわることなく、動脈の温存を必ず確認して丁寧に結紮・切断しております。だいたい片側で1~1.5時間、両側でも2~2.5時間で終わり、その後は帰宅していただける日帰り手術となります。停留精巣手術後の方の顕微鏡下精索静脈瘤手術は難易度がさらに上がりますが、当院で実施可能です。

 

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